Case A
相談の背景
今回の相談者さんは、ご家族との関係、特に精神的な障害を持つ妹さんとの関わり方について深く悩んでいました。
彼女は、これまで仕事と両立しながら、多忙な両親に代わって実家の家事を一手に引き受けてきました。しかし、ご自身が実家を出た後、家事を引き継ぐはずだった妹さんは、それに全く協力しようとしません。
悩みの核心
相談者さんの悩みは、主に以下の4つの要素が複雑に絡み合っていました。
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障害年金に対する考え方の相違 妹さんは、障害年金(月7万円)の大半を趣味や交際費に充てていました。相談者さんは、年金受給自体は当然の権利としつつも、将来への備えをせず、家事も手伝わずに遊びに費やす姿勢に強い疑問を感じていました。この価値観の違いが、姉妹間の溝を深める一因となっていました。
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妹さんの言動と「障害」という盾 妹さんは家事をしないだけでなく、注意を受けると「障害者の気持ちがわかるの?」といった言葉で感情的に反論し、話し合いを拒絶します。これにより、家族は問題の根本的な解決に踏み込めない状況に陥っていました。
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ご両親の過保護な対応 ご両親は妹さんを不憫に思うあまり、金銭的な要求をすべて受け入れ、生活態度を強く咎めることができません。その結果、妹さんの自立を妨げる一因となり、家事などの負担がすべて相談者さんにのしかかるという不公平な状況を生み出していました。
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相談者さん自身の責任感と疲弊 「家族だから助けなければ」「姉妹で支え合うべき」という強い責任感から、相談者さんは妹さんと両親の要求に応え続けてきました。しかし、その結果、心身ともに疲弊し、ご自身の体調を崩して仕事を辞めざるを得ない状況にまで追い込まれていました。
会話を通じて見出した解決の糸口
私との対話の中で、相談者さんはご自身の状況を客観的に見つめ直し、考え方に大きな変化が生まれました。
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妹さんを「自然災害」と捉える 年金を受け取っているレベルの障害は、現代の医療でも完治が難しい状態であり、本人の意思だけで行動を改めるのは極めて困難です。そこで、コントロール不能な他人(妹さん)の言動を変えようと苦心するのではなく、**「自然災害」のように「自分ではどうにもできないこと」**として捉えることにしました。この視点の転換により、無力感や怒りから解放されるきっかけとなりました。
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「自分を犠牲にする優しさ」からの脱却 「家族だから」という責任感で自分を犠牲にし続けることは、誰のためにもならないと気づきました。本当に守るべきは、まず自分自身の心と体の健康、そして自分の人生であるという結論に至りました。
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物理的・精神的な「距離を置く」という選択 最終的に、相談者さんは、ご両親には申し訳ないと感じつつも、これ以上実家の問題に深入りするのをやめ、意識的に距離を置く(逃げる)ことが、自分を守るための最善の策であると決意されました。
このケースは、「家族」という逃れがたい関係の中で、一人が過剰な負担を背負ってしまう「共依存」にも似た構造が問題の本質であったと言えます。